走れメッサーシュミット!!渋谷救出作戦

(中島みゆきの「地上の星」をいめーじしてください……)

…代々木駅近くの火事、ホームに火が回る
…山手線、運転見合わせ
…混乱する山手線

…悪友M、慣れていない交通機関
…取り残される
…終電まで間に合わない!

…友を見捨てるな!
…東名、首都高、メッサーシュミットでの夜間高速走行!
…がんばれメッサーシュミット
…池尻IC、出口が追い越し車線

―男は友のために走った!―
「走れメッサーシュミット!!渋谷救出大作戦」



2002年6月某日……

福島から一人の男が東京を目指していた。

通称「悪友M」、仕事のために、仕事を終えた足で電車に乗り込み、出張先の東京を目指していた。目的地は横浜の友人の家、そこではSが待っていた。

自宅でテレビを待っていたいたS、彼がいつものようにアクセスしていたインターネットのニュース速報、それに代々木駅での火災が起き山手線が不通になっている事が報じられていた。

Sは思った。
「なにか胸騒ぎがする」

Sは、これまでのMとの付き合いで様々なトラブルに巻き込まれていた。
学生時代の「憑依現象をライブで見た事件」「ヤンキーに車3台で囲まれた事件」…さまざまなトラブルがあった。
まさか今回も……そんな思いをSは感じていた。

午後11時になっても、Mからの連絡はまだなかった。
「きっと無事に向かっているはず」
連絡がないのは、何事も起こらなかったからだと思っていたS。しかし、なにか妙な胸騒ぎがした。

「いやな感じだ」
SはMの携帯に電話した。受話器の向こうから聞こえる呼び鈴がやけに長く感じた……
1回、2回…やっとMが出た。
「はまっちまったよー」
Sは愕然とした。やはり彼も山手線に閉じこめられたままだったのだ!

「12時の終電までに渋谷につけるか?」
Sの声に思わず力が入った。終電に間に合わなければ、MはSの自宅まで到着する事が出来ない。マーコスを秋田にメンテに出しているSには、彼を迎えに行ける車はなかった。
「なんとかやってみる」
Mの声は……重かった……
「わかった、がんばってくれ!」
Sの声に現れたいらだちは自分自身に対するものだった。

時間は刻々と過ぎていく。
ふとSは思った……たった一つ残された方法に気がついた。
「メッサーシュミットだ!」
総排気量249CC、最高速度120キロ、高速道路の法定速度100。そして大人が2人安心して乗れるスペースを持っている。
出張用の荷物を抱えたM、250CCのバイクでは迎えに行けないが、これならいける……いや、行かなくてはいけない!

Sはすぐさまメッサーシュミットのキーを手にするとMの携帯に連絡を入れた。
Mは山手線を降りて、なんとか別の交通手段で渋谷駅を目指すところだった。
「今どこだ? これから迎えに行く!だが、メッサーでは渋谷が限界だ!渋谷までなんとか到着してくれ!」
「……わかった。渋谷まではなんとかたどり着くようにする」
Mの声がかすかに明るくなったのをSは感じた。

駐車場に止めてあるメッサーシュミットに乗り込むとSはエンジンをかけた。
いつものように穏やかにアイドリングするエンジン、レプリカ故のホンダエンジンの信頼性がとても頼もしかった。
Sにはひとつ気になることがあった、路面がまだしめっている。3輪で走行するメッサーシュミットには水溜まりは非常に危険だった。まして高速道路ならば、その危険は大きくなる。
メッサーシュミットは道路を一歩一歩確かめるように高速道路を、東名青葉インターから渋谷に向けて走った!


すでに深夜になっていた高速道路。道は空いていた。気になった路面もすでに乾いていた。
だが、またSには気がかりな事が一つあった。
夜の高速道路は、他の車も速度を上げて走っている。メッサーシュミットがついていけるだろうか?
Sの運転するメッサーシュミットは次々と他の車に抜かれていた。
東名、首都高、ふたつの料金所を通り過ぎた。
Sは素早くメーターパネルを確認する。
水温異常なし、ライト順調……速度も乗っている。
Sは思った。
「大丈夫、これならいける」
Sはこれからの走行ルートを計算した。首都高・渋谷出口で降りて渋滞にはまるよりも、一つ手前になる池尻出口で降りた方が渋滞に出くわすことは避けられるはずだ。
「池尻で降りる」
Sの決断だった。
しかし、池尻出口は、出口が追い越し車線側にある……今、Sの隣の追い越し車線は、かなりの速度で普通車やトラックが追い抜いていっていた。
「負けられない!」
Sとメッサーシュミットとの総力戦になった!

わずかな下り坂で加速し、Sはウィンカーを右に出した。
後ろに、ディスチャージヘッドランプの普通車が迫ってきていた。一瞬、Sは本線に戻ることを考えた。
その時……普通車の速度が落ち、メッサーのために車間距離を取ってくれた。
Sは胸が熱くなった……
メッサーシュミットは池尻出口から、無事に一般道へ降りる事が出来た。

数分後Mの携帯が鳴った。
それは無事にメッサーシュミットが渋谷駅近くで彼を待っているという知らせだった……
「まもなく渋谷に着く」
Mの声にSが答えた。
「わかった、待っている」
それから15分後、復旧した山手線で到着したMが無事Sとの再会を果たした。
メッサーシュミットが一人の男を、山手線不通の悲劇からの救出に成功した瞬間だった。

.

.
.
.
(中島みゆき「ヘッドライト・テールライト」のイメージで……)
.
.
.

 その後、出張の荷物を満載したメッサーシュミットは、国道246号線でのんびりとSの自宅へ向かって走り通した。
往復55キロ……短くもなく、長くもない距離、しかし、メッサーシュミットと二人の男たちにとって忘れられられない距離になった……
 その後二人はメッサーシュミットで、謎の吉野屋に立ち寄って牛丼を食べた……
 ここに、悪友Mを山手線の混乱から救出する作戦は終わりを告げた……


 あれから……
 メッサーシュミットは、またいつものように、Sの友人の駐車場で猫の日光浴の場所として穏やかな時間を送っている。
 Sは仕事場へ向かうため、毎日その道を通っている、時折あのメッサーシュミットでのあつい救出劇を思い出すことも滅多にないという。
「誰でも、あの場にいたら私と同じ事をしたと思います」
 Sの言葉は、いつも謙虚だ。
 助けられた悪友M、彼もいつも通りの日常に戻っている。最近では、ホームページに登場することが多くなり、一部では静かなブーム(?)になっているらしい。


「走れメッサーシュミット!!渋谷救出大作戦」

―男は友のために走った!―






2002/6/28
制作・著作
「JOKER'S NOTE」

 注意:プロジェクトXはNHK総合で火曜夜9時15分から放送されている人気番組です。今回はその雰囲気を真似ただけで、このHPとNHKの「プロジェクトX」はなにも関係がありません。