JAGUAR XJ−S納車

よほどのことがない限り手を出してはいけないジャガーXJ−S
私は手を出してしまいました。

 マーコスを手に入れて、ふと思うんですが……
 マーコスを走らせるということは凄く刹那的な快楽を求める行為です。
 「刹那」というのは仏教での最小の時間の単位ですから、それはもう短い時間です。
 マーコスに乗ってワインディングロードをかっ飛ばすと、「こんなに気持ちいいなら、もうマーコスが壊れたっていいや」と思うんですよね。
 コツコツとレストアを重ねたマーコスが一級のスポーツカーに戻り、そして東章産業で足回りのリフレッシュやハイカムの搭載、エンジンのフルバランス取り、フルコン導入によってマーコスは相当な戦闘力を持つようになりました。特に東章でセッティングされたフルコンの影響はすごくて、これまでに何度もマーコスを運転している悪友Mがフルコン搭載後に運転したときに「うわっ!なんだこの加速!いままでと全然違う!」とびっくりしたくらいです。
 快楽を得られるスポーツカーになったマーコス……おかげで渋滞の激しい道路をのんびりと乗っても全然楽しくありません(普通に走れるけど自分の中に生まれる、アクセルを踏みたい衝動と戦う事になるので……)。しかも、いたずら防止のためにいつもボディカバーで人目を避けていますからどうしてもマーコスを運転するときには手間がかかります。
 刹那的快楽ツールとなったマーコスですが、ドライバーにも相応のテンションを求めるようになったのです。

 一方、メッサーシュミットに乗るのも、別なベクトルを向いたテンションが必要です。メッサーシュミットだと散歩している犬に吠えられますし、子供達に指を指されるし、スクーターに乗った高校生に「うおーっ!すっげーっ!バイクかこれ!」とか言われるのを覚悟して乗らないといけません。

 話がどんどんズレてしまいましたが……こんな乗り物ばかりだと疲れます……
 どこかでウツウツとストレスみたいなものが溜まってくると、私はヤバイ方向へ向かっていきます。
 突然変な乗り物に乗りたくなったり、別の車を物色したりします……バイクやメッサーシュミットはこの周期の時に購入してしまったものです。

 そして……手に入れてしまったのが……ジャガーXJ−Sです。理由は、これなら普通に乗れそうだから、と言うとあちこちから「それは間違っている!」といっぱい反論されますけど(^^;
 そもそもきっかけは東章産業でマーコスのECUの講義を受けに行ったときにショップに入っているXJ−Sがあって、それを見てぽつりと「綺麗な車ですよねぇ、XJ−Sって」と東章産業の吉田社長夫人の前でつぶやいたのがはじまりです。
 「ありますけど買いません?」
 と、天使の微笑みで私に言うもんですからついついいろいろ話を聞いて、さらに”マイスター”吉田社長に詳しい話を聞いたときにはすでに心は「XJ−Sは俺のもの!」状態でした。「ありますけど買いません?」というジャガーXJ−Sは、シルバーで90年式、北米仕様のためイギリス本国仕様よりもオーバーヒートに強い、しかも、東章産業が輸入してずっとメンテナンスしてきたものでコンディションも把握しているし、内装も綺麗との事。しかも超お買い得!
 一般的にはXJ−Sは「手を出すな!」と言われています。パーツが高価で、しかも12気筒はメンテが大変! しかも信頼性が向上したと言われるのは93年以降のモデルで、私が買うのはそれ以前の90年のモデルです。でも東章が輸入し、ずっとメンテされてきたXJ−Sなら間違いない!
 2日後には、吉田社長に電話して買うことを告げていました。

 それにしても、ジャガーですよ!
 しかも12気筒!さらに5300CCです。
 いやー、今までマーコスに乗ってきた私にとってジャガーは敵みたいなもので、乗り越えるべき存在だったのに、あっさりとその軍門に下ってしまいました。心の中ではずーっと「ジャガーなんかにゃ負けねぇぜ」と言っていたのに、あっさりXJ−Sの購入を決めて、すぐに本屋に行ってジャガーの本を買っていたりする自分がいました。

 そして、2003年1月18日、秋田の東章産業で納車となりました。
 間近で見る印象は「綺麗」の一言でした。秋田の冬の曇り空のためにうっすらと青く見えるシルバーのボディ、ヒビ一つはいっていないウッドパネル…しかも東章産業でエンジンOH済みでベアリングなどもすべて交換されている間違いなくベストコンディションのXJ−Sは静かに佇んでいました。
 単なるシルバーなのかもしれませんが、曇り空というのは光自体が青みがかかっています。それがシルバーのボディに写ってとても綺麗だったんです。夕陽に映えるマーコス1650GTも惚れ惚れするほど格好いいけど、曇り空の下にひっそりと佇むXJ−Sもまた良い!逆境に負けない精神的な強さをイメージしてしまいました。
 XJ−SはもともとEタイプの後継として世に出て、あちこちで派手に扱われた車です。しかし今ではその地位をXK8やXKRに譲り、逆に12気筒のメンテの大変さや、パーツの高価さから敬遠されるモデルとなったXJ−S……嫌われ者の12気筒……
 とはいえ、排気量は5300CC、最高馬力は280馬力。
 そういうものを持ちながらも少しもそれを自慢せず、静かに佇むXJ−S。
 カッコイイ! こりゃまたすばらしい男の車じゃないですか!
 実力は持っているのに、それを自慢しないで逆境の中でも静かに、でもしっかりと踏ん張っている。こんなスタイルは今の世の中、全然美徳ではないのかもしれませんが、カッコイイ男のスタイルの一つであることは間違いありません。

 こうして、私の車としてジャガーXJ−Sが加わったのです。

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